交換留学への道
Keio University
Study AbroadKeio UniversityAbout This SiteLink
Left Banner  
  Study Abroad > diary3  

 

 

 
 


Opening Dinner


Harbour Cruise 1


Harbour Cruise 2

 

寄り道の意義

「寄り道」人間としてDiary 1に登場したイギリス育ちのドイツ人Tomだが、私は密かに彼のことを未来のドイツ大臣候補と思っている。彼とハーバークルーズに出かけた際に告白されて驚いたのだが、実は彼はケンブリッジ大学の中でも名門のキングスカレッジ(※1)に在籍していたらしい。モデル顔負けのルックスで一見幸せな人生を歩んでそうに見える彼だが、ケンブリッジで辛い思いをして入学後わずか6日で退学し、オーストラリアにやってきたそう。名声を捨てるという一大決心をさらりとやってのけた彼は、年下とは思えない強い決断力を持っているのだ。彼の経歴を聞いてビックリしたのも束の間、今度は新入寮生のくせして寮の運営委員に立候補してしまったからまたビックリ。この行動力と決断力は大臣にぴったりだ。

日本では、彼のような行動的で独創的な学生が育たない理由として「偏差値制のせいだ」と主張する人も多い。しかし共通試験で高得点を取らないと一流大学に入れないのはほぼ全世界共通であり、日本に限った話ではない。そもそもTom自身も、病院の院長であり大学教授でもある父を持つ良家の生まれで、public school(※2)に通い、Cambridgeに入ったという偏差値制の頂点に立つような人間だ。むしろ私は、日本の学生と彼との違いを生む原因は、「寄り道」の有無であると思う。

欧米では「寄り道」を支える制度が数多くあり、例えばCambridge大学には学生を社会に一旦放り出して経験を積ませる制度がある。彼も例に漏れず、休学してインターンやらボランティアなどに打ち込んだ「寄り道」人間の典型例だが、彼の奥深さはまさに「寄り道」が功を奏したのだと思う。一方で、日本で「寄り道」と言うと、ワーホリや受験浪人、フリーターを連想しがちでイメージは悪いが、Tomを見ていると良い「寄り道」もあるのだと感じる。そして、私はこの交換留学が良い「寄り道」になることを願っている。私自身、今までストレートで大学院までやってきた見栄えの良い履歴書に、留年という二文字が加わるリスクを背負って交換留学に応募した。しかし彼を見ていると、私も彼と同じように掛け替えのない良い「寄り道」を経験しているのだと、自分の判断の正当性を裏打ちしてくれているようで、何だか心強い。

 

※1:英国ではCambridge大学とOxford大学のみ、学生全員をCollegeと呼ばれる複数の宿舎に所属させる制度を持っている。Cambridgeの場合、中でもKings CollegeとTrinity Collegeが最も権威がある。

※2:イギリス英語で寄宿学校の意味。慶應義塾の義塾とは、public schoolを意味する。アメリカ英語ではprep schoolと言う。日本では予備校のことをprep schoolと英訳しているが、これは誤りである。豪州ではboarding schoolと呼ぶのが普通。