交換留学への道
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敵は身近に置け

“Hey John, how’s it going?”と朝からキッチンスタッフに声をかけ、昼には”Thanks Paul”とデパートの店員に、夜には”Yo what’s up Andy?”とUNIGYMスタッフに声をかける。例え自分が「お客様」であろうが、労働者の名前を積極的に覚え彼らの労を労うことがこの国で生き抜く術である。アジア系には冷たいキッチンスタッフも、私には大盛りにしてくれたりとサービスしてくれる。デパートの店員Paulも、私がロボットの研究をしている事まで知っており、店に行く度に「先週テレビでロボットの特集見たんだ!」などと言って擦り寄ってきてくれる。

オーストラリア人は「調子どうよ」と赤の他人に声をかけるのが大好きだ。しかし、彼らも私も別にカフェの店員の調子がどうかなんて本当は知りたいわけではない。本心としては、積極的に店員とお喋りして関係を作っていくことが、結局は自分自身への特別待遇という形で帰ってくるという、合理的な背景があっての行動なのである。例えば、初めはとても感じ悪かった近所のカフェの店員も、今では私の顔を見ただけで何を注文するのか予想してくるようになった。「今日はtake awayなのぉ?」って、予想が外れると悔しがるのが面白い。

結局「敵は身近に置け」(お向かいに住むBrianの名言)というのがオージー流である。確かに、日本に比べればサービスが悪いことも多いが(※1)、少し世間話をして仲良くなればガラリと態度が変わるのが通例である。つまり、「職業意識の薄さ」というこの社会の欠点を、「調子どうよ」と言うだけで簡単に新たな人間関係を築くことができるというオーストラリアの長所で上手く補うのだ。オーストラリアで感じの悪いサービスを受けても怒ってはいけない。まずは、自分の態度を少しオージー流に変えてみよう。そうすれば、きっと日本よりも素晴らしいサービスをしてくれるはずだ。

 

※1:オーストラリアの名誉のために補足するが、この国でも星付きのホテルや中級以上の衣料品店などは極めて対応がよい。対応が悪いのは、公立病院や安い店に限っての話だ。同じ病院でも、治療費の高い私立病院は対応が良い。結局良いサービスを受けたければ高級店に行きなさいということかもしれない。日本よりも所得格差が大きいオーストラリアでは、これは致し方ないのだ。