留学前の不安
― 語学力さえあれば心配なし
「不安そうに見えるよ」とアメリカ人のSamが心配そうな顔で尋ねてくる。私が留学に発つ前日に、彼が私を昼食に招待してくれた時の話だ。頭の中では笑顔を作っているつもりだったのだが、彼には本心を見破られてたようだ。そう、私は本当に不安を抱えていた。
要は、短期間で友達ができるか不安だった。ランチを一人で食べることになるのではないかなど、今思うとバカらしい心配事で頭の中は一杯だった。というのも、もし私が外国から慶應に交換留学生としてやってきたらと想像するだけで怖いからだ。どの授業でもサークルや研究室のグループが形成されていて、とても留学生がどこかのグループに割り込んで話しかけるような雰囲気ではないからだ。もっともSamも私の心配事は承知のようで、「欧米ではサークルのグループで固まることはない」と断言してたが、そんな慰めも当時の私の頭上を素通りするだけだった。
結論としては、Samの意見は正しかった。結局、人間関係の構築の仕方が違うのだ。日本人は、少しずつ自分を出していき、時間をかけて友達を作る。他方欧米人は、初めから自分を皆にさらけ出して、その中から気の合いそうな友達を探す。だから欧米では、初めの二週間程度は多くのクラスメートがオープンに会話に入れてくれる。このガードの薄い間に友達を作れれば良いのだ。どちらも最終的には人間関係を築けるが、時間もコストであるからには欧米流の単純な人間関係の方が経済的な合理性がある。合理主義の私にとって、欧米流の人間関係は居心地が良いものであった。
そんなこんなで、私の留学前の心配事はいつの間にか吹っ飛んでいった。留学を控えた方は、きっと私と同じような不安を抱えているに違いない。しかし、人懐っこい性格と、1時間程度途切れずに会話できる語学力(最低でもTOEFL
CBT250, TOEIC 900)さえあれば、必要以上に心配すべきでないだろう。
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