交換留学への道
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成功する寮の選び方 ― ネットの情報は信じるな・先輩に聞け


僕が渡航準備をしていた時、慶應はUNSWから留学生を受け入れていなかったので、寮選定の際は公式ウェブサイトで情報収集することにした。公式ウェブサイトを一通り見た結果、「世界中から集まる寮生と、オーストラリアの現地の学生が集う寮」との触れ込みのInternational House(IH)が印象に残った。もちろん、留学生同士で固まるつもりなんてさらさらなかったが、「半分が国際交流に興味を持つオージーで、しかもオーストラリアに留学しながら世界中の留学生と交流できるなんて素晴らしい!」、そう勝手に確信してしまった僕は、早速アプリケーションシートを送る。当時はものすごーくIHに入りたかったので、気合を入れたアプリケーションシートの評価は高かったらしく、かなりの倍率だったという入寮試験を見事パスし、晴れて入寮したのだが。。。

結論から言うと、失敗だった。建前上は寮生の半分がオーストラリア人とのことだったが、現実には他の寮に馴染めない移民や留学生の駆け込み寺のようになっていた。寮生は皆、親切で寛容なのだが、この寛容さがやや風変わりな寮生達を引き寄せている側面もあった。この移民街風の独特の雰囲気を嫌ってオージーが応募しなくなり、160人の定員中、留学生を合わせてもアングロサクソン系は約10人しか居ない状況。ウェブの写真を見る限り人種のバランスも取れているように見えたのだが、ウェブサイトを作ったデヴィ曰く「人種のバランスが取れているように見える写真を選んだ」のだそうだ。

それでも「住めば都」というのは事実で、オージー達と留学生が上手く交じり合った寮の中心的なグループに混ぜてもらった僕は、毎週ビーチに出かけたり、バーベキューをやったりと、当初の目論見通りオーストラリア文化を経験することができたのだった。毎日、中庭をトムやブラット達と占拠してご飯を食べたり、テニスしたり、ジムに皆で出かけた日々は、今でも貴重な青春時代の1ページとなっている。まぁ、パっと見や喋り方にかなーり癖のある奴はポツポツと居るものの、皆、根は良い奴らなのだった。その上寮費が一番安い(当時のレートで食費込で年間60万円)のだから、まぁ悪くない寮だったと思っている。

とはいえ、僕の心の中では「現地学生の多い寮に住んでみたい」という気持ちが日に日に高まるのであった。尤もIHの住民たちの間で現地学生が多い寮の評判はすこぶる悪く、それが決心できずにいた理由なのだが、最後には腹をくくって僕はIHを飛び出した。新しい寮では、黙ってつっ立ってるだけでは誰も話かけてくれなかった。自ら精力的に握手しまくり、入寮三日で寮生全員の名前を覚えた。こうして現地の学生に溶け込む努力を続けることで、次第に現地の学生達も私を受け入れてくれるようになった。もちろん「俺は外国人には興味ない」ってな態度の人もわずかに居たが、例え返事が返ってこなくても毎日欠かさず百人の寮生全員に大きな声で挨拶を続け、握手して、沢山笑って、「現地学生の輪の中に入りたい」という熱意を伝えた。そして一週間くらい返事なき挨拶を続けていると、それまで僕を含む留学生達の存在すら認知しようとしていなかったトーマスが突然「お前は人一倍努力しているよ」と僕の肩を強く抱き寄せてくれたのだった。「友達になりたい」という強い熱意を示せば、必ず伝わるのだ。振り返ると、この寮で嫌な思い出は一切なく、楽しい思い出で一杯だった。思い切って寮を移って正解だった。

移民が多い寮なら日本人も馴染みやすいが 入るべきではない
日本人が馴染むのは大変だが 現地学生が多い寮に入るべき
精力的に話しかければ 現地学生の仲間に入れてもらえる

 


誤解しないで欲しいのは、アングロサクソン系の現地学生が多い寮での生活は決してバラ色ではないということ。日本人にとって、寮に溶け込む上でのハードルは格段に高くなると覚悟すべきだ。日本人は拒絶はされないものの、特に興味も持ってもらえない。女性の場合、英語が下手でも現地学生の彼氏を作ってエンジョイするパターンも散見するが、男の場合は愛嬌だけで生き抜くのは難しい。現地学生と表面的に挨拶を交わしたり、寮内の全員が誘ってもらえるイベントに参加する程度なら難しくないが、その表面的な人間関係を深く掘り下げ、個人的に飲みに行ったり一緒に旅行したりといった「絆」と呼べるレベルまで発展させるのが難しい。現地学生にとって、非英語圏からの留学生なんて強いて友人にしたい対象ではないのだ。だから「現地社会に溶け込みたい」という強い熱意を常に発信し続けなければ、端の方で固まっている移民や留学生グループに混ぜてもらうしかなくなるのである。

結局、現地学生が多い寮でマイノリティーが上手く生き抜くのは容易ではない。だからこそIHのようなマイノリティー村に逃げ込む留学生が多いのだが、そんな留学体験は似非留学に過ぎないことを肝に銘じるべきだ。茨の道かもしれないが、真の国際人になりたければ現地学生が最も多い寮に飛び込むべきである。ただ現地学生に囲まれただけでは友達にはなれず、ネイティブと遜色ない英語力がなければ相手にされないことは認識すべきだ。現地文化にも相当精通していなければならず、例えば「ベロニカズ(豪州出身の双子のグループ)のリサって可愛いよね」とか「昨日のブロンコス(現地のフットボールチーム)の試合がどうの」とか、そんな次元の話に参加できなければ現地学生の輪には入れない。最低でも英検1級は日本で獲得し、現地新聞にも徹底的に目を通してから旅立たなければ、どんなに良い寮に入り込んでも意味がない。

欧米系の多い寮で日本人が生き抜くのは容易ではない
現地学生のグループに入るには 英検1級と現地文化の理解が必須
それでも現地学生が最も多い寮に飛び込め

 


このように、学生自治の概念が浸透しているオーストラリアでは、各々の寮に明確な採用方針があって、寮ごとに文字通り寮生の「カラー」が異なる。結果的にIHが社会に上手く溶け込めない外国人達の聖域化しようが、逆にオージーを好んで採用する寮があろうが、寮生がハッピーである限り大学も不干渉を決め込んでいる。だから、自分と合う寮がどこかをしっかり見極めた上で応募したい。

ところが、どの寮に現地学生が多いとか、雰囲気がどうかという肝心な情報は、寮の公式ウェブサイトには一切書かれてない。聞こえの良いことばかり書いてあって、本当の雰囲気なんて分からない*。(当時はまだなかったが)今は、ブログやFacebookがあるので情報収集しやすくなっただろうが、皆、嫌な経験は書かないので、実態より良く聞こえやすい。だから、先輩交換留学生や派遣先から来日している交換留学生から、ウェブには書かれていない本当の雰囲気を聞くべきだ。例え面識のない先輩であっても、遠慮せずに聞けば良い。きっと優しく対応してくれるはずだ。

そして自分が先輩の立場になった際には、後輩がより良い留学生活を送れるよう全力で支えることを忘れずに。社会に出てからも、同じ「慶應出身」というだけで優しく接してくれる先輩が本当に多い。その伝統は、絶対に途絶えさせてはいけない。

寮の公式ウェブサイトの写真や記述内容はあてにならない
人種や年齢の構成を 先輩交換留学生に聞くべき
自分が先輩になった際には 全力で後輩を支えること


*公式サイトにオージーと留学生の比率なんて書いていないが、本当は誰だって気になるものだ。だから現地の学生達は友人を通じてせっせと噂を収集し、実際に見学に行って自らジャッジしている。徹底した情報収集と行動力が重要なのである。