映画で学ぶオーストラリア
等身大のオージーライフを学ぶには、映画やドラマが良い教材だ。例えば、初対面の人との握手の交わし方や、クールな話し方なんて、学校では教えてくれない。「クールな話し方」なんて自己啓発本もない。ところがHome
and Awayを何度か見ていると、そのうち「あぁ、こう挨拶すればクールなのねぇ!」ってな感じで悟るものがあるのだ。そういう小さな悟りを積み重ね、オージー達との距離を縮めていくのである。
本来は、上手な振る舞いをできる人を見つて、それをまねて、場数を踏んで学ぶものではあるが、いかんせん交換留学は一瞬で過ぎ去るので、留学に出てから学び始めるのでは遅い。だから、離日前に映画やドラマを「文化の題材」という視点で見て、どういう立ち振る舞いが豪州でクールと認知されているのか、分析する。留学前からドラマを見て経験値を積むことで、寮やクラスでのデビューで失敗するリスクを減らすのである。
スイミング・アップストリーム (Swimming Upstream)
- オリンピックスイマーの感動の半生
後にオーストラリアのオリンピックスイマーとなるTony Fingletonが、アルコール依存症の実の父からの育児放棄や暴力を乗り越え、水泳選手として成功を収め、ついにはハーバード大学へ進学するまでの半生を綴った、感動の実話である。日本はおろか、同じ英語圏である北米でも公開されなかった低予算映画であるが、知る人ぞ知る名作だ。
実はこの映画、オーストラリア文化の教材として見ると、また違った面白さがある。まずはFingleton家の構造(左の写真)をよーく見て欲しい。玄関が二階にあるでしょ!実はこの高床式住居は、増築の際に平屋を底上げするというブリスベン特有の工法に起因している。同じオーストラリアでも、例えばシドニーなんかでは殆ど見かけない不思議な地域限定文化なのだ。
そして子沢山であること(左写真参照)。Fingleton家も4男1女であるが、僕の友人ゲイブはなんと10人兄弟というからビックリ。カトリックが多いという宗教的理由もあるが、かつては物価が安く、ごく普通の中流家庭でもビーチサイドに広い住居を構えられるという豊かさがあった。他の欧米諸国にはない中流家庭の余裕が、子沢山の背景にあったのだろう。
ところが、ここ10年ほどで出生率は急速に悪化しつつあるという。地価は急騰し、荒廃する公立学校に子息を通わせるわけにいかなくなり*1、かつての余裕が急速に失われているからだ。だからこそ、この映画の持つ「そうそう古き良きオーストラリアってこんなんだったよね」ってな独特の雰囲気には、何だか懐かしさを感じてしまうのだ。きっと10年後には全く別の国になっているであろうことを踏まえれば、古き良きオーストラリア文化の貴重な記録としても、この映画の価値が上がるというものである。
*1: "The parents of some
Anglo-European students are avoiding what they perceive
as predominantly Lebanese, Muslim and Asian schools...."
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