交換留学への道
Keio University
Study AbroadKeio UniversityAbout This SiteLink
Left Banner  
  Study Abroad > screening.html  

 

 

 
 
 

交換留学の学内選考への直言〜理想の留学生像を示し 学生の努力を促す


オリンピックの日本代表選考で、トップスコアを出した選手が代表に選ばれず、より順位の低い選手が「レース内容が良かった」との不可解な理由から選出されるという事件が起こった。スコアが高い奴が落選してしまうのでは、選手は一体何を目指して頑張れば良いのか分からなくなってしまう。仮にスコア以外も評価するならば、最初から選考基準を明確にすべきであり、後からこじつけ的な理由を持ち出して順位をひっくり返すのでは不透明と言われても仕方がない。

実は、10年前のことではあるが、義塾の交換の選考でも、自称国際派の某教授が自分の学科の学生を事前面接し、本番でも自ら面接した挙句、他の応募者をごっそり落として、知り合いの学生を合格させたという事件が起こっている。前述のオリンピック代表選考と変わらない不透明な選考であって、民間企業の入社試験でこんな行為をしたら処分ものだが、結局、某教授の責任は追及されずじまいだった。短い選手生命の中でオリンピックの出場機会を1回でも逃すと致命的であるのと同様に、交換留学だって人生の中で応募できる機会は数回しかない。コンプライアンス意識の低い教員の愚行の結果、数人の学生の人生が変わってしまったわけであり、僕は義塾を好きだからこそ、義塾の将来のために、ハッキリと警告したいと思う。

とは言え、ここまで極端でなくとも、選考の透明性、公平性については改善すべき点は多い。

例えば、「スコアは高いけど帰国子女」と「スコアはそこそこだけど純ジャパ」の学生が応募して、どちらを選ぶのか?派遣する学生には高いスコアを求めるべきだが、海外経験のない学生に優先的にチャンスを与えるという考え方も大切だ。「最終学年でラストチャンスの学生」と「優秀だけど2年生で来年もチャンスがある学生」ならどうか?仮に最終学年の奴にチャンスを与えたとして、落ちた2年生の学生が、翌年合格する保障なんてあるのだろうか?

同様に、「私はダートマスじゃないと嫌だ」と言っている学生がいて、もう一人はより優秀なのに「ダートマスが第一希望だが、ジョージタウンが第二希望」と言っているとしよう。どちらを選ぶんだろうか?仮に前者が選ばれるならば、「俺はこの学校じゃないと嫌だ」と自己主張の強い奴の方の希望がとおりやすいことになるわけで、それではフェアではない。ところが、「ここじゃないと嫌だ」と強情張った奴を合格させたりしているので、ますます学生が戦略的に強情を張りはじめてと、呆れる。

ブラピが主演したマネーボールという映画では、「あいつはイケメン」だから採用しようと主張するスカウトに、ブラピ扮するプロ野球チームのゼネラル・マネージャーが統計データから他のさえない選手を採用すべきだと反論する。

実は、世界トップのコンサルや投資銀行、法律事務所の新人採用においても、マネーボールさながらのデータに立脚した採用方法がとられており、学歴、TOEIC、SPI、性格テスト、小論文、面接結果スコアを統計的に処理して合格候補者を絞り込んでいる。結局、たかだか30分の面接なんてちょっと準備すれば欺ける可能性があるのに対し、TOEICや学歴は何年もの努力の積み重ねの証であって、そういう数値は容易に欺けないということだ。だから、データを多用したスクリーニングが重視されているのである。

もちろん、データでスクリーニングした後は、面接を重視しているのは事実だし、イケメンだとそれなりに優遇されるとか(この業界も結局、客商売であって「印象」は重要であり、早稲田卒の元モデルを採用したことがある)、大物政治家の息子をコネクション狙いで採用したとか、フェアとは言えない政治的判断も少なからず作用する実態*は認める 。それでも、社会人経験を持たない教員による超属人的な選考が繰り広げられる交換留学なんかより、よほど科学的なエビデンスに基づいたフェアな選考であることは断言できる。

交換留学の選考も、トップファームの新人採用手法に倣うべき点は多い。まず何より、語学スコアが高ければ、必ず高い評価をされる原則は絶対に担保すべきである。過去に、TOEFLがハイスコアな学生を「君はそんなに英語ができるなら、交換ではなく海外の大学院に進学すれば良い」といって落とし、合格基準点に未達の学生を受からせたケースが確認されているが、こんな滅茶苦茶な選考をやっていては、学生が何を目指して勉強すれば良いのか分からなくなる。

また、「私はこの大学にしか行きたくないんです(キリッ!)」と自己主張すると、面接官が「熱意がある」とか誤解して、自己主張野郎が合格しがちな実態は速やかに改めるべきだ。単純に、書類・面接の評価点が高い順に、志望順位が高い大学を割り当てていくべきである。そうすると、「俺はこの大学じゃないと嫌だ」とか言っている奴は極端に不利になり、多くの希望大学を書く方が有利になる。それが当たり前の姿だし、結果として派遣学生の平均水準が向上する(評価上位から順番に必ず受かるようになるから)。留学未経験者を帰国子女より優先させるというのも、学生全体の国際経験値を引き上げるという点で合理性はあると思うが、そういう選考をするならば、ハッキリ公言すべきだろう。

選考基準を明確化し、公表することで、学生がどこを目指して努力すべきか悟ることができる。面接においても、理想とする「合格者像」を提示すべきだ。例えば、勉強以外に何かに打ち込んでいるバランス感覚が欲しいなら、ハッキリそう伝えるべきである。三菱商事みたいに、有名大学出身で、英語ができて、スポーツもできて多少の理不尽もOKです!ってな学生が欲しいならば、(まぁ三菱商事も公言はしないけれど、同社の社員を見れば明確なわけで)そう公言すべきなのである。そうすれば、留学を目指す学生が、課外活動にもバランス良く打ち込むようになるわけだ。

将来、世界で活躍する塾員を増やすという観点では、「理想の留学生像」は、民間のトップファームの入社選考基準と連続性がある方が望ましい。従って、志望理由に書かれた研究や学習内容を過度に問い詰めるよりも、語学力、地頭、積極性、課外活動などがバランスされた学生を選んだ方が良いだろう。教員に選考させている宿命として、評価の視点が研究寄りになる傾向も見受けられるので、選考基準を民間視点に振る配慮は欲しいところだ。

民間の入社選考基準と連続性を持たせた理想像を明確に提示することで、学生が合格者像に近づくべく切磋琢磨する結果、義塾全体として派遣留学生の品質が上がり、より優秀な学生を世界に送り出し、卒業後も世界の重要なポジションを卒業生が押さえることで、結果、義塾のレピュテーションがあがる。そういう好循環を起こすことが、教育機関として取るべき戦略なのである。

 

面接は属人的になりやすく データに基づくスクリーニングを重視すべき
ハイスコアは必ずプラス評価をすべき
合計スコアが高い応募者から順に希望大学を機械的に割り振るべき
「理想の留学生像」を公開し 学生の努力(試験準備)を促すべき
民間のトップファームの入社試験と選別基準を整合させるべき


※:アンフェアな選考ではあったが、元モデルのイケメン新人はクライアントとの会食に引っ張りだこだし、大物政治家の息子は抜群の知名度で宣伝効果は高かった。結局、公平な選考ではなくとも、企業収益にはきちんと貢献しているのだから、ある意味、合理的な選考だったと言える。